ロバート・A. ハインライン「人形使い」☆☆☆
アイオワ州に未確認飛行物体が飛来し、その調査に赴いた捜査官6名が行方不明となる。
何か奇妙なことが起きているのではないかと危惧した秘密機関の指令で、捜査官サムとメアリ、そして上司のオールドマンの3人は現地に向かった。
どこに姿を消したか分からない6名もの捜査官、奇怪な行動をとる地域住民たち。調査を進めている内に、サムたちは人間の首から背中に寄生して宿主を思い通りに操るナメクジ状のエイリアンの存在に気がつく。
この生物は寄生した人間の記憶や知識などはそのままで、彼らをムリヤリ言いなりにしてしまう能力を持っていた。
単純に読んで楽しい地球侵略テーマの名作SF小説です。
ハインラインの小説は大抵は期待を裏切らないエンターティメント作品が多いですけど、ただ彼の哲学というか思想が散りばめられている場合が多く、それが少し気になる人もいるようです。
この作品には比較的そういった要素が少なくて、シンプルな冒険SFになっていると思います。
地球侵略テーマのSFと言えば、古典的なところではH.G.ウェルズの「宇宙戦争」から始まり、ジャック・フィニィの「盗まれた街」などユニークで不気味な作品に事欠きません。
侵略者が人間の精神を乗っ取るテーマの作品も、フレドリック・ブラウン「73光年の妖怪」やE.F.ラッセルの「金星の尖兵」など面白い作品が多い。
そうした中で「人形使い」のユニークな点は、未来を舞台にしているところでしょうか。(2007年が作品の舞台になりますが、この小説が発表されたのは1951年です)
未来が舞台のためSF的な小道具がさりげなく使われていますが、2007年を過ぎてしまった今読むと、そういう小道具が不思議と少年時代にSFに憧れたあの頃を思い出させてくれて、懐かしいような気がしてきます。
作品自体は名手ハインラインが書いたクセのない単純明快な冒険SFですので、誰が読んでも楽しめると思います。
どことなくユーモラスなのも良いですね。