面白い本を探す

半村良「およね平吉時穴道行」の感想です。

半村良「およね平吉時穴道行」☆☆

およね平吉時穴道行

半村良の初期の短編集、というよりもおそらく処女短編集なんだろうと思います。

管理人は半村良作品が好きで色々と読みましたが、「石の血脈」を読むまでは読まず嫌いみたいな時があって、その原因と言うか理由が、この短編集の表題作「およね平吉時穴道行」を読んで、大したことないなぁと思ったことだったように思います。

読み返してみると、そんなに悪い作品ではないと思いますけど、でも当時はテーマもアイディアも普通だし、あまり新鮮な感じを受けなかったんでしょうね。

まぁその頃は、シェクリィやブラッドベリやF・ブラウン、ハインラインなんかの外国作家のSF短編にハマっていて、日本人作家のSFをちょっと下に見ていたんでしょう。


全部で8篇の短編を収録しています。

「収穫」は半村良の処女作です。解説の中島河太郎氏に言わせれば、のしかかるような圧迫的不安と恐怖があるそうですけど、管理人はそういうテーマの割にはどこか牧歌的でおっとりした印象を受けました。

「H氏のSF」は意外と書けそうで書けないタイプの作品かなと思いました。最後に麻雀にかけるあたりは面白い。

「酒」は世話物的な話が突拍子もないSFに変わるという、日本的なSFという感じ。

「幽タレ考」「虚空の男」は作者の豊富な職業経験を活かした短編という気がします。

「組曲・北珊瑚礁」はサスペンス小説風の作品で、今ひとつ成功していない印象でした。

「太平記異聞」は日本の古典を読んでいるような雰囲気で、特に初めのうちは疲れますが味わいはあります。

表題作「およね平吉時穴道行」は江戸時代と現代を巡るタイムトラベル物です。目新しさはありませんけど、日本的な情緒をSFに活かした作品で、よく考えるとそういう点では先駆者的な作品だったかも知れませんね。