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半村良「石の血脈」の感想です。

半村良「石の血脈」☆☆☆

石の血脈

気鋭の若き建築家・隅田賢也は、突然失踪した美しく貞淑な妻・比沙子を探して夜の街をさまよううちに、チャイナドレスを身にまとった比沙子が見知らぬ男に抱かれる現場を目撃する。

比沙子との夫婦仲はうまくいっていたし、妻はそんな事をするような性格ではないはず。

妻の失踪と不可解な行動の理由を探ろうとする賢也に近づく巨大な罠、知らずに巻き込まれていくうちに更に深まる謎。そんな賢也の前にかつて恋人だった香織が現れ、香織と関係を持った賢也自身にも変化が訪れる・・・。


若いころの管理人は海外のSF・ファンタジィが面白くて大好きで、それに比べて日本のSFはどうも変に理屈っぽくて、今ひとつ面白さに欠けると思っていました。(星新一は別として・・・)

そんな時にこの作品が面白いと友人に聞いて、大して期待せずに読んだところ本当に驚きました。

こんなにスゴイSFエンターテイメントが日本にもあったのかって感じです。

伝奇小説という分野は昔からありましたけど、この作品は吸血鬼伝説・人狼伝説にドルメンなどの遺跡の謎を足して、イスラムの暗殺教団やアトランティスまで登場させる豪腕。しかもそれが実にうまくマッチしているのです。

基本的には与太話のはずが妙に説得力があって、つい夢中になってしまいます。

この作品を読んでから半村良にハマって、「伝説」シリーズなどを読み漁りました。

どれも基本的には面白かったけど、緻密な構想と説得力、愛情渦巻く情念のようなものを感じさせるのは、この「石の血脈」が一番だと思います。

何となく埋もれたSF超大作という感じがしますけど、日本SF史上有数の傑作だと思います。