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ピーター・スピーゲルマン「わたしを殺して、そして傷口を舐めて。」の感想です。

ピーター・スピーゲルマン「わたしを殺して、そして傷口を舐めて。」☆☆☆

わたしを殺して、そして傷口を舐めて。

NYの金融界の名門一族マーチ家の一員でありながら、家業の金融業界に入らずに私立探偵をしているジョン・マーチ。

そんな彼の元に、不仲な次兄デイヴィッドから調査依頼が入る。

ネットを介して知り合った名も知らぬ女から脅迫を受けていると話すデイヴィッドの話は要領を得ず、ジョンの質問にも高圧的で非協力的な態度を示すが、そうした中でデイヴィッドが垣間見せる不安な様子や、デイヴィッドとその妻ステファニーの不安定な夫婦関係もあり、一族のスキャンダルが広がらない事を願ってジョンは調査を始めた。

しかし正体不明の脅迫者の惨殺死体が発見されたことにより、事件は複雑な様相を現してくる。

浮気相手とのSMまがいの情事の一切をビデオに撮って脅迫する女の目的は何だったのか?。ジョンの調査が進むうちに浮かび上がる女の過去・・・。


シェイマス賞最優秀新人賞を受賞した「黒い地図」の探偵ジョン・マーチを主人公にした独特の雰囲気のあるサスペンス・ミステリィで、2007年度のダガー賞候補作となっています。

主人公はどこか影のある私立探偵ですが、ハード・ボイルド小説に多いタフなヒーロー・タイプでもなく、どこか人生を達観しているようなタイプでもなく、人生の敗残者というわけでもなく、ごく普通の男です。

家業である金融界には向いていないと自覚して探偵業をしていますが、それにもどこか違和感を覚えている。

家長である長男は、そんな弟を冷静に見守っていますが、一族のみんなはどこか冷たい視線でジョンを見つめている。

そして恋人クレアは人妻で、彼女との関係も複雑な状況になっています。

そんなジョンの背景と、裕福な既婚者を狙い撃ちして脅迫する謎の女の生い立ち、更に事件の謎が絶妙なバランスで進行するサスペンス。

「RED CAT」という原題を「わたしを殺して、そして傷口を舐めて。」と邦訳したセンスもなかなかだと思います。

管理人はこの作品、けっこう好きです。