オースン・スコット・カード「消えた少年たち」☆☆☆
インディアナからノースカロライナまで引っ越してきたモルモン教徒の一家が、新天地で出くわす様々な出来事を描いた感動作です。
世の父親は是非読んで下さい、とは言いすぎですかね。
ステップ・フレッチャーは30代前半、妻のディアンヌと子供が3人、そして妻のお腹の中には4人目の子供がいた。
1980年代の家庭用ゲーム機の黎明期に作ったアタリ向けのゲーム・ソフトが大当たりして一躍金持ちになり、その状態が永遠に続くと思っていたところが、アタリ社のゲーム機がバッタリと売れなくなってしまい、借金を抱えたステップは心機一転新しい会社に就職するため知らない土地に越して来た。
しかし引越し先のオンボロの家の中から何故か虫が大量に発生する。
8歳の長男スティーヴィは南部なまりが原因で学校になじめず、そうするうちに目に見えない友達とだけ遊ぶようになってしまい、心理療法を受けさせるかどうかで悩む。
親しくなった地域のモルモン教徒の中には奇人・変人がいて、彼らとの付き合いもストレスのもとになる。
何よりもステップが就職したゲーム・ソフト開発会社には強欲で間抜けな上司がいて、なかなか思うような仕事が出来ない。
会社を辞めたくて仕方がないが、辞められるような経済状態ではない。
物語のかなりの部分で、そういう毎日の出来事がユーモラスに綴られています。
やはり日々ストレスを感じている妻ディアンヌとの会話や、スティーヴィを巡ってのステップの対応がとても誠実で、同じ父親でも管理人とは大違いです。
人生に向かっていく姿勢がとても真剣なんですね。
この作品はハヤカワSF文庫から出ていましたが、殆どがそういう日常の出来事を描いていて、SF・ファンタジィらしい展開を本当に見せるのは後半になってからです。
そして意外なラストシーンに管理人はホロっとしました。
独身の頃にこの作品を読んで同じ様な感想を持ったかどうかは疑問ですけど、子供を持つ父親としてステップと同様にスティーヴィを誇りに思います。
とても感動しました。