重松清「ビタミンF」☆☆☆
「ゲンコツ」「はずれくじ」「パンドラ」「セッちゃん」「なぎさホテルにて」「かさぶたまぶた」「母帰る」の7篇を収録した第124回直木賞受賞の短篇集です。
世のお父さん方に元気を与える小説というところでしょうか。
管理人がこの作品を読んだ時は確か40代でした。
やや下の世代となる30代後半のお父さん世代やその家族の悩める姿を描いた短篇を読んで、自分の過ぎ去った時を思い出しながら、みんな大変だなぁと思ったものです。
もう若いとは言えない自分のこれからに不安を感じ、子供たちは成長して反抗的になり、仕事の上では責任ある立場になってストレスがためる、という多くの日本のミドル世代のサラリーマンの共感を得やすい設定で描かれた小説。
思わずうなずいたり、ホロリとしたりして、家庭や家族ってホントに大切ですよね。
しかし当時から問題視され今でも日々新聞紙上をにぎわすイジメの問題。この作品の中の「セッちゃん」もそういう作品です。
イジメという言葉が良くないような気がします。
犯罪であり卑怯であり、人として恥ずべき事であることをもっと知らしめるような言葉を使うべきでは・・・。
それにしても、いつ頃から日本社会はこんなに加害者に優しくなったんだろう。
管理人は大丈夫だったようですが、自分の子どもが深刻なイジメに遭っていたら、親としては本当に辛いよね。
「セッちゃん」では一応はそれなりの解決となって良かったですけど、色々と考えさせてくれる作品です。