重松清「卒業」☆☆☆

卒業

何となく引きずってきた過去からの卒業をテーマにした感動的な短篇集で、「まゆみのマーチ」「あおげば尊し」「卒業」「追伸」の4編を収録しています。

どの作品も40代の父親(そして息子でも有る)を中心に家族愛を描いた作品で泣けますが、管理人が特に印象深かったのは「まゆみのマーチ」です。

東京の一流商社に勤める40歳の僕は、病院に入院し危篤となった母に会うため、そしてその葬儀のため、本当に久しぶりに田舎に帰る。

病院で会った妹まゆみと会うのも久しぶり。

不倫を繰り返して、仕事も頻繁に替えて、家族に迷惑をかけ続ける出来の悪い妹。東京の一流大学を出て、一流の会社で働く兄から見ると歯がゆいばかりの妹。そしてそんな妹を甘やかす人が良いだけの母。

まゆみは小学校に入ったばかりの頃に不登校になった事が有った。

周りの皆が色々な事を言っても、母の態度だけはいつも同じで、まゆみにとても優しく、幼かった僕にはそれも歯がゆかった・・・という出だしで始まる物語はホント良いですねぇ。泣けました。

人生って案外と捨てたもんじゃないと思える短篇集でした。


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