花沢健吾「アイアムアヒーロー」☆☆☆
現時点(2012.9.24)で9巻までコミックとして刊行されている、2010年から2012年までマンガ大賞候補となったホラーアクション・マンガです。しかし、こんな風にジャンルを決めつけられない特異な作品ですね。
主人公は35歳の極端に臆病で小心者の青年・鈴木英雄。世間一般がオタクをイメージする黒縁メガネをかけてチェックのシャツとジーンズを着た小太りの風貌、狭いアパートで一人暮らしの生活をしている売れない漫画家です。
ほんの短い間雑誌に連載していましたが、今は雑誌社に新しいマンガの構想を持ち込みながら、別の漫画家のアシスタントをして暮らしています
ともかく臆病者で、毎日変な妄想が浮かんで夜が怖い。アイアムアヒーローと自分を鼓舞しながら朝が来るのを待っています。
そんな自分に自信もないし満たされない日々を過ごしているけど、それでも一応彼女らしき女性がいます。
こんなダメ青年を主人公にした売れない漫画家の日常が淡々と描かれ、妄想を抱いた青年の貧乏青春物語が延々と続くので、そういう物語なのかと思い始めた頃に、突然雰囲気が変わり、驚きの世界が繰り広げられていきます。ハッキリ言ってこの転換がスゴイです。
日本中で原因不明の疫病だか現象だかで、人々がゾンビ化していく現象が発生します。
さっきまで普通の人だったのに、突然おかしくなったり、ゾンビ化した人に噛まれて感染してゾンビ化したりして・・・。
そしてゾンビはすごく凶暴で、他の人に襲いかかります。
みんな何が起こっているのか分からないうちに襲われて殺されて、そしてゾンビになっていきます。
臆病者の主人公は妄想よりも怖い現実に出会って、混乱しながらも逃げまわります。アイアムアヒーローと呟きながら・・・。
猟銃の所有許可書を持ち、名前は英雄でヒーローですけど、世界が大混乱の中にあっても法律違反をする度胸すらない異色のヒーローの生存をかけた冒険が始まります。
正直言ってこの作品、どんな結末になるのか想像が出来ません。
・・・と読み続けている内に、2017年3月にコミック22巻でついに完結しました。
読み終えた感想は、何となくラストはしょぼかったかな・・・というのが正直なところです。
出だしがすごくて、中盤も盛り上がったのですけど、終盤に来て妙な方向に行ってしまったような気がします。
別にアンハッピーというような終わり方でもないけど、もう少ししっくりと来るような終わり方にして欲しかったですね。期待値が高かっただけに少々残念な気がします。