源氏鶏太「一所懸命」☆☆

S工業総務課に勤務する青年・矢沢太郎は、知り合いの女性・今野京子から誘われて、据え膳食わぬは男の恥とばかりに一夜をともにする。実は京子はある事情からパチンコ業を営む男性の二号さんになることが決まっていた。

一方、太郎の妹の麻衣子は、同じ会社に務める麻田五郎に好意を抱いていたが、結婚退社をする同僚の律子が五郎にバージンを捧げたという話を聞いて、五郎を避けるようになっていた。

そうした中で、太郎は祖父が不良に絡まれたところを助けてくれた女性・江口以久子と知り合い彼女に惹かれていくが、婚約者から捨てられ妊娠中絶をした経験を持つ以久子は太郎と距離を置こうとしていた。

太郎に惹かれながらも距離を置く以久子と、五郎を避けながらも五郎を忘れられない麻衣子は、親しい友人になっている。

そんなある日、太郎の前に今野京子が現れ、自身の妊娠とその父親が太郎であることを告げてきた・・・。


この小説を読んだのは高校生の時かな?確か東京新聞に連載されていたと思いますが、管理人が読んだ最初の源氏鶏太作品です。

現実的にはありそうもない話で、それなりにキチンとした青年二人が揃いも揃って好きでもない女に言い寄られて寝てしまい、その後女はよその男と一緒になり、女のことなどすっかり忘れていると突然目の前に現れて「あなたの子供を妊娠しています」と言われるなんてね。

好きな娘がいるのに、こういう状況になってしまうと、さて自分だったらどうするんだろう・・・結構怖いですね。

こういう恋のドタバタを描いたサラリーマン小説ですが、源氏鶏太のどことなくのんびりとした文章のおかげで、あまり深刻にならずに読めるところが管理人的には好きです。

源氏鶏太は同じようなシチュエーションの小説を幾つか書いていると思いますけど、そういうのも昔の大衆小説としてはよくある話ですね。


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