源氏鶏太「夏の終りの海」☆☆

夏の終りの海

題名から受ける印象と、実際に読み終えた後の印象が違う。

タイトルは寂しい感じがしますが、小説の内容はけっしてそんなことはない。

源氏鶏太の文体が明るいので、暗い内容にはならないのでしょう。

昭和50年代の作品だから源氏鶏太の作品にしては比較的後期の作品で、例えば「男性無用」など女性会社員をBG(ビジネスガール)と呼んだ時代の作品に比べると、女性の描き方が男性サラリーマンと比べて弱いというか、勢いがないように思います。

大衆小説らしく善玉・悪玉がはっきりしていますが、それでも爽やかで善玉風でしっかりした人物に描かれた人が、段々と下らない人間になったりするのは個人的には残念な感じ。

ただ全体的には源氏鶏太らしく、本来はもっとドロドロしている人間関係をサラリとした関係に描いて読みやすいのは好きです。


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