ジェイン・アン・クレンツ「星のかけらを奏でて」☆☆☆
200年前に地球から人類が移住した惑星ハーモニー。移住する際に使われた地球とハーモニーをつなぐ「カーテン」が消滅したことで地球との交流は失われたが、地球と同様に人類の生存に適したハーモニーで人類は琥珀を媒体にした超能力を得て、古代ハーモニー人の残した遺跡近くに街を作って暮らしていた。
優秀な超考古学者で、古代ハーモニー人が仕掛けたトラップを解除する能力の持ち主リディアは、遺跡発掘現場で徘徊するゴーストに触れられて2日間も意識を失い、その時の記憶を失くした事から後遺症があると大学に判断され、超考古学者としてのキャリアを失って、今は三流博物館で働いている。
そのリディアを個人コンサルタントとして雇ったエメットは、失踪した甥の痕跡を追いかけて街にやってきた元ゴーストハンター・ギルドの長だった。
エメットの深い事情など知らないリディアが自分の職場である博物館内を案内した時、二人はリディアの友人で強欲だった骨董業者の死体を発見してしまう。
惑星ハーモニーを舞台にしたクレンツのSFロマンス・シリーズ第1作目です。
「カーテン」という仕組みを利用して他の惑星に移住した人類と言うと「緑の瞳のアマリリス」を連想します。
あの作品も別の惑星で超能力が開花した人たちが主人公でしたが、あちらはセント・ヘレンズという名前の惑星でプリズムを利用する能力でしたね。
セント・ヘレンズを舞台に出来なかったのは、超能力の設定が違っていたからという事でしょうか・・・。でも作品の設定や雰囲気が実によく似ている作品ですね。
甥が何らかの事件に巻き込まれたと考えたエメットと、エメットから高額の報酬を得て新しいキャリアを築きたいリディアが、事件の謎を追ううちに惹かれ合っていくというロマンチックSFサスペンス。
クレンツのミステリィは意外な犯人を用意することが多いのですが、この作品はそういうこともなく、またロマンス色も比較的薄めでした。
読みやすくてなかなか面白い作品です。
次作の「星のかけらを紡いで」に続くような終わり方になっていますが、この作品だけでも楽しめると思います。