ジェイムズ・P・ホーガン「仮想空間計画」☆☆☆
バーのバーテンをしているジョー・コリガンの前に、ある日リリィと名乗る女性客が現れ、二人はヴァーチャル・リアリティの開発計画中に起きた事故で、シミュレーションの世界の中に閉じ込められていると語った。
この世界は何かがおかしいと感じていたジョーは、リリィとの会話で真実に気が付き、仮想空間からの脱出を図るのだが・・・。
この手のSF小説はきっと面白いに違いないと思って読みましたが、期待を裏切らない作品でした。流石にホーガンです。
前半は現実世界と微妙に異なる夢の中にいるみたいな世界を描いて、何だかP・K・ディックが好きそうな主題だなと思いました。
ただホーガンは流石にハードSFの旗手だけあって、現実ではない世界を描いても、手法がSF的で理知的でロジカルで、感覚的で悪夢のような雰囲気を漂わすディックの世界とは少々違います。
物語の中盤あたりから、現実世界の科学者ジョーが仮想空間を作っていく場面に移ります。
管理人はユニークな非現実の世界に興味津々でいたのに、突然場面が変わってしまって興を削がれたように感じましたが、後から思えば充分に理由があったし、そもそもホーガンはVRが作りあげた世界の描写よりも、VR自体又はVRが及ぼす影響の方に興味が有るようです。
そういう科学者のような視点が強いので、どうしても冒険SF的な要素が少なくなるのは仕方がないのでしょう。
しかしとても興味深く面白い作品でした。