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ジェイン・オースティン「自負と偏見(高慢と偏見)」の感想です。

ジェイン・オースティン「自負と偏見(高慢と偏見)」☆☆☆

自負と偏見

サマセット・モームが「世界の十大小説」に挙げたという恋愛小説の古典で、何度か映画化もされています。最近ではキーラ・ナイトレイ主演で「プライドと偏見」というタイトルで映画化されていて管理人も観ましたが、やっぱり原作小説には及ばないなぁというのが正直な感想です。

トム・ハンクスとメグ・ライアン主演のラブ・コメ「ユー・ガット・メール(You've Got Mail)」で、二人が初めて会う店でトム・ハンクスを待つメグ・ライアンが読んでいたのがこの小説。また色々なロマンス小説の中でも、女性たちの愛読書として良く登場します。

管理人もこの作品は大好きで何度も読み返していますけど、何度読んでも古臭さをあまり感じない作品で、とても18世紀の終わりに書かれたとは思えません。

しかしどこが面白いかって言われても上手く表現できません。

やはり登場人物が魅力的で、話が面白くって、しかも当時のイギリスの風俗が面白いという事でしょうか。

モーム曰く「大した事件が起こるわけでもないのに、ページをめくる手が止まらなくなる」というのも良く分かります。

物語はイギリスの平和な田舎町ロンボーンに、資産家の独身男性ビングリーが引っ越してくるところから始まります。

ロンボーンの名士ベネット家には、あまり人付き合いを好まない皮肉屋の主人と、騒がしくて少々思慮の足りない奥さん、そして5人の年頃の娘が住んでいます。

ミセス・ベネットは、美人でしっかり者だけど少々内気の長女ジェインを、5千ポンドの年収があるというビングリーに嫁がせようとあの手この手を駆使し、さらに才気あふれる次女エリザベスをビングリーの気難しい友人で年収1万ポンドのダーシーにどうかしらと考えていますが、ダーシーの人を見下すような傲慢な態度にエリザベスは強い反感を抱いています。

ダーシーは初めてエリザベスを見た時には、大して美しくもない娘とエリザベスを評し、しかもそれを近くにいたエリザベスに聞かれてしまいますが、姉ジェインと一緒に親友のビングリーのところを頻繁に訪ねるエリザベスを知るうちに、ユーモアと思いやりのある個性的な美人エリザベスに徐々に惹かれだしてしまいます。

そんなロンボーンの町に、ダーシーと浅からぬ因縁を持つウィカムという愛想の良い青年士官が現れて・・・。

身分制度のハッキリしたイギリス。中流以上の家庭に生まれた女性にとって、裕福で家柄の良い相手に嫁ぐ事が何よりも大切だった時代。そして男性もまた家柄に恵まれ持参金が多い女性との結婚を重視していた時代。

年収5千ポンドのビングリーや年収1万ポンドのダーシーは、まさに誰もが望むような良縁で、年収2千ポンドのベネット家とは同じような地主階級と言っても少し身分が違う。そういう時代背景があってのダーシーの高慢とエリザベスの偏見になります。

ただオースティン自身は身分制度を重視しつつも、どこかでそんな世相をからかっている様な感じも受けます。

なかなか奥が深い作品ですけど決して堅苦しい作品ではなく、二人の気持ちの行き違いの場面や誤解が解けた後の再会の場面などがドラマチックに描かれて、肩肘張らずに単純に楽しめる恋愛小説です。

未読の方は是非一度読むことをお勧めします。