山本一力「はぐれ牡丹」☆☆

はぐれ牡丹

江戸深川の裏店・八兵衛店に住み、野菜の担ぎ売りをしている一乃は、元は日本橋の大店の両替商・本多屋の跡取り娘だったが、寺子屋の師匠をしている鉄幹と恋仲になり、親の反対を振り切って駆け落ちして、今は4歳になる息子・幹太郎も生まれ、親子三人で貧しいながらも幸せに暮らしていた。

娘・一乃を勘当した本多屋の主人・木三郎は、娘のことが心配で気になって仕方がないが、今さら勘当を解く訳にもいかず、店に出入りしている八卦見師・白龍に頼んで様子を知らせて貰っている。

そんな折り、一乃は野菜を仕入れている砂村新田の農家おせきの竹やぶで、一分金を拾った。

こんな所に大金が落ちているのはおかしいと感じた一乃が、白龍を通じて本多屋で一分金の真贋を確かめると、これが精巧に作られた贋金だと判明する。

そして同じ頃、八兵衛店で兄と暮らす娘おあきが、何者かに拐われるという事件が起きる。

一乃は夫・鉄幹や長屋の住人たちなどと、おあきを助けるために奔走するのだが・・・。


かなり変わった性分の女性が主人公の時代小説です。

山本一力らしい力技でササッと読める作品で、設定に色々とおかしな点があるとは思いますけど、悪党以外の登場人物みんなが善人で前向きで一所懸命で、素直に楽しめる作品です。

悪党だって、ヤクザの親分の寅吉などは、とんでもないことをするものの、あくまでも金のためで、意味もなく残忍というわけでなく、こういう性格設定は共感できる気がします。

読んでいてストレスを感じないところが、本当に魅力ですね。


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