山本一力「あかね空」☆☆☆

あかね空

京の老舗で修行を積み、江戸深川の裏長屋に越して来て店を開いた豆腐職人の永吉は、江戸で成功を収める希望を抱いていたが、江戸の風味とは異なる京風の豆腐は江戸っ子の好みに合わず、なかなか受け入れられない。

そんな永吉の世話を焼くうちに、永吉と世帯を持つことになる桶屋の娘おふみ。

二人は朝早くから夜遅くまで一所懸命に働き、周りの人たちの助けを受けながら表店を持つまでに至るが、子供が生まれ、おふみの両親が亡くなる頃から、夫婦の間に微妙なすれ違いが出てくる。


江戸時代を舞台にして、子育て、夫婦の気持ちのずれ、家族のあり方や絆などを描いた第126回直木賞受賞の人情時代小説です。

永吉たちの子どもが成長して、親子2代にわたる豆腐屋の話になっていく物語は、何やらパールバックの「大地」のような、親子でも考え方が違い生き方が異なる世代間のズレのようなものも描いていて、山本一力の作品によくある分かりやすさとは少し違った印象を受けます。

勿論「大地」のような大河小説という訳ではなく、この作品はもっとテンポよく展開し上手くまとめられた人情劇です。

けっして派手な作品ではありませんが、しみじみと良かったですね。


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