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米澤穂信「満願」の感想です。

米澤穂信「満願」☆☆

満願

6篇のサスペンスを収録した短編集です。

以前読んだ「折れた竜骨」がとても面白かったので期待して読みましたが、全体的に暗くて後味もあまり良くない作品が揃っています。

印象的な作品が多いのですが、管理人の好みとは少し違う感じで、多分再読はしないと思います。


「夜警」は交番勤務のベテラン警察官とそこに配属された新米警察官の話。警官には向かない人間がいる、というベテラン警察官の言葉通りの展開のミステリィです。

「死人宿」は昔の恋人に無神経な事を言ってしまったと後悔し、彼女が働く鄙びた温泉宿に出向いた証券マンが、恋人に試される姿を描いたミステリィ。途中までホラーかな?と思って読んでいましたが、ホラーでは有りませんでした。

「石榴」は口が上手く女性を惹きつけるカリスマ性を持つ男性と結婚した美しい女性と、彼女の二人の娘の物語で、何やら人間の業のようなものを感じさせる印象深い作品。

「万灯」は仕事一筋に生きてきた商社マンの物語。途上国に赴任し、悲運が重なり、ついには自分を正当化してとんでもないことをしでかしたビジネスマンの悲劇が描かれています。

「関守」は売れない三文ライターが都市伝説を求めて出向いた片田舎の峠で出会う不条理を描いたサスペンス。展開が読みやすいこの作品もホラー風味があります。

表題作「満願」は学生時代に下宿していた家の奥さんの心情を弁護士が綴る物語。個人的にはピンと来ない感じもしましたが・・・。


ネタバレに近い言い方ですが、どの作品もハッピーエンドとは言えません。でも何かしら心に残るモノはあります。