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米澤穂信「折れた竜骨」の感想です。

米澤穂信「折れた竜骨」☆☆☆

12世紀イングランドの辺境の島を舞台にして、魔法をからませた密室殺人を推理するユニークなミステリィです。

王権が不安定な中で辺境の地ソロン諸島を治める領主ローレント・エイルウィンの娘アミーナは、サラセンの魔術を使う暗殺騎士を倒すため島にやってきた病院兄弟団の騎士ファルク・フィッツジョンとその従者ニコラに出会い、二人を小ソロン島にある領主の館に案内する。

ファルクとニコラは数日前に不可解な死を遂げた小ソロン島の見張り番の死を暗殺騎士によるものと断定した上で、暗殺騎士が狙う真の標的ローレントを守るため、ローレントの周囲の調査を彼に申入れようとしていた。

しかしソロン諸島では、それよりも火急の事態が生じていた。

ローレントの祖父の代に島を襲撃した呪われた不死のデーン人が、またもやソロン島を襲うという。

ソロン島には貧弱な軍勢しか常駐していないため、領主ローレントは優れた技を持つ4人の傭兵を従騎士エイブ・ハーバードを通して雇うことにしていた。

傭兵たちを前にして呪われた不死のデーン人来襲を告げ、それに対処するために作戦室に閉じこもったローレントは、その夜何者かに殺害される。

ファルクの調べで、ローレントを殺害したのは暗殺騎士に秘術をかけられ本人も知らぬまま走狗と化した人間の仕業だと判明するが、その夜ローレントが作戦室に籠ることを知っていたのは、雇われた傭兵4人と吟遊詩人、従騎士エイブ、そしてローレントの娘アミーナとエイルウィン家の家令ロスエア・フラーの8名のみ。

果たしてファルクとニコラは犯人にたどり着くことが出来るのか。


サラセンの魔法と民衆を救う病院兄弟団、病院兄弟団から派生した暗殺騎士、不死身のデーン人、青銅の巨人や魔法の燭台など、道具立てが出来の悪いファンタジィのようですけど、メイン・テーマは孤島で起こったローレント殺害の犯人探しですし、犯人探しの筋道も、事件の真相も、ロジカルな組立ですから、ミステリィ・ファンも充分に楽しめる作品になっています。

日本人が書く西洋を舞台にしたファンタジィは、どうしても安っぽい印象を受けてしまうことが多いのですけど、この作品は不思議と違和感を感じないで読めました。

とても面白い作品です。