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奥田英朗「町長選挙」の感想です。

奥田英朗「町長選挙」☆☆

町長選挙

よく言えば天真爛漫。しかし実際には身勝手で幼児っぽい性格で、とんでもなく迷惑な精神科医・伊良部一郎が、バカなことを仕出かしながらも結果的には神経症に悩む人々の症状を軽くしてしまうと言う連作短編シリーズの第3作目の作品です。

「オーナー」「アンポンマン」「カリスマ稼業」「町長選挙」の4編を収録しています。


表題作「町長選挙」は、他の作品とは少し趣を変えているやや長めの作品です。

田舎の首長選挙をカリカチュアしたギャグ連発の物語で、昔の筒井康隆を思わせるようなとんでもない話が展開していきます。これをどう結末に結びつけていくのかと思いましたが、解決策やら結果やらが面白い作品です。

他の3作は、いつものように都内の伝統ある総合病院の精神科という一種のブランド信仰で診察を受けに来る患者さんに対して、とんでもない事をしでかす伊良部がおかしくて、読んでいて思わず笑っちゃう作品ぞろいです。

それぞれ、「オーナー」は読売の渡辺恒夫氏、「アンポンマン」はホリエもん、「カリスマ稼業」は女優の黒木瞳氏の3人がモデルだと想像出来ますが、3編ともに実に可笑しいです。

前作までのキレがないような印象も受けましたが、それでも伊良部一郎シリーズはやっぱり面白いですよね。


伊良部一郎シリーズ
 「イン・ザ・プール」
 「空中ブランコ
 「町長選挙」(本書)