雲田はるこ「昭和元禄落語心中」☆☆☆

昭和元禄落語心中

刑務所に慰問に来た当代きっての落語名人8代目有楽亭八雲の十八番の演目「死神」を聞いて、オレの生きる道はコレだ!と思い込んだ若者・与太郎は、弟子を取らないことで有名な八雲師匠のところの押しかけ弟子になった。

しかし弟子になったは良いものの、八雲には落語を教える気などないみたい。

それでも粘っているうちに、何とか前座にしてもらえた。

八雲の家には八雲の兄弟弟子で親友だった今は亡き天才落語家・助六の一人娘・小夏も世話になっているけど、どうやら小夏と八雲の仲には微妙な空気が流れているようだ。

小夏は敬愛する父親の落語を諳んじているけど、女に落語は出来ないと八雲も小夏も思っている。

八雲の芸を盗もうと躍起になる与太郎だったが、しかし八雲の落語は素晴らしいけど自分には到底出来ない芸風だと悟る与太郎。

自分には小夏の父助六の演った落語の方が合う、とばかりに八雲独演会の前座で助六の真似をして話してみるが、稽古不足が大いに祟って大失敗してしまう。

八雲に破門を言い渡された与太郎は八雲に頭を下げて許しを請うが、そんな与太郎と小夏を前にして、八雲は先代の師匠に弟子入りした当座からの八雲・助六の物語を聞かせた。


いいですねぇ。半端者だった与太郎が、これこそオレが生きる道と、斜陽の落語界に入って、持ち前の明るい前向きな性格で落語に打ち込む姿勢を見せ、何を考えているのか今ひとつ分からない怜悧な男八雲がそんな与太郎の面倒を見る。

どうも与太郎と八雲の親友だった助六には、どこか共通点があるんじゃないかと思います。

生涯独身を貫いて落語に一生を捧げてきた八雲の生き様が明らかになるのは、暫く先の展開になりますが、タイトル通り昭和の雰囲気を感じさせる良質なマンガです。

         

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