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フランシス・ホジソン・バーネット「小公子」の感想です。

フランシス・ホジソン・バーネット「小公子」☆☆☆

小公子

アメリカの下町で母親と暮らす7歳の少年セドリック・エロルは、ビロードの服が似合う、可愛らしくて、どことなく気品を感じさせる少年だった。

活発で思いやりにあふれ、'大好きなママ'のことが本当に好きで、イギリス人の夫エロル大尉を亡くした後失意に沈むママを慰めながら、毎日を楽しく暮らしていた。

そんなある日、セドリック母子の元をイギリス人弁護士のハビシャム氏が訪ねて来る。

ハビシャム氏はイギリスの由緒正しい貴族ドリンコート伯爵家の顧問弁護士で、伯爵家の跡取りだった長男と次男が未婚のまま相次いで亡くなり、三男エロル大尉も亡くなった今は、セドリックがドリンコート伯爵家の跡継ぎフォントルロイ卿だと告げる。

身分のない娘と駆け落ち同然に結婚した息子エロル大尉を勘当したものの、跡継ぎの息子たちが相次いで亡くなり、伯爵家を継ぐものがいなくなったために、仕方なくセドリックを引き取る事にしたドリンコート伯爵は誰からも恐れられている暴君で、血の繋がった孫はともかく、その母親のことを悪しざまに罵り、憎んでいることは領地の人々なら誰もが知っている。

だがそんな事など知らない母と子は、知り合いなど一人としていないイギリスに旅立つ事を決める。


無邪気で思いやりにあふれ、祖父を並ぶ者のいない立派な人物だと尊敬するセドリックが、いじわるで頑なな老貴族の心を奪っていき、周囲の人たちを幸せにしていく心温まる児童文学の傑作です。

面白い場面は沢山ありますが、特に管理人はセドリックがドリンコート伯爵と初めて出会う場面が好きです。

この作品は、管理人が小学生の頃、風邪をひいたかで学校を休んで寝ていた日に、何故か母が買ってきてくれた河出書房の少年少女世界の名作シリーズで読みました。

訳者はなんとノーベル賞作家(当時はまだでしたが)川端康成氏、解説をアニメ鉄腕アトムの主題歌を作詞した谷川俊太郎氏、挿絵をいわさきちひろ氏が書いています。

小公女」との合本で、おそらく世間的には小公女のほうが評価が高いような気がしますが、管理人は小公子の方が好きでした。

貧しさとひもじさの中で健気に生きていく小公女の波瀾万丈の物語と違って、基本的には平穏な物語でストレスがたまりません。

もちろん事件は起こりますが、そうしたことよりも素晴らしい少年セドリックが周囲の人たちを如何にしてトリコにしていくかを描いた優しい物語です。

ずるい人間は出てきますが、基本的に悪人は登場せず、全体的に明るい印象の物語で、管理人には心地よいです。

管理人は今でもたまにこの本を開きます。そして亡くなった母を思い出します。

物語も素晴らしいけど、本そのものも宝物です。