エリザベス・ヘイドン「ラプソディ 3部作」☆☆☆

ラプソディ

「ラプソディ 血脈の子」「プロフェシイ 大地の子」「デスティニイ 大空の子」の3作で構成された、善と悪の対決と純粋な愛を描いた壮大なイメージのロマンチックなファンタジィで、まだ少年・少女であるサムとエミリーの出会いと誓いから始まるこの物語は、長じてラプソディと名乗るエミリーの時間と空間を移動した冒険の数々を描いて、奔放な発想が独特な雰囲気を生み出している傑作です。


何者かが行ったいにしえの魔法により、突然大昔の世界に転移させられた少年グウィディオン(サム)が出会う美少女エミリー。

二人は一目で恋に落ち、星空の下で愛を交わし、結婚を誓うが、その翌日エミリーの14歳の誕生日に、サムは元の世界に戻されてしまう。

約束を信じてサムを待ちわびたエミリーは、サムを探してひとり港町に出かけるが彼の姿は見つからない。

傷心したエミリーは生きていくためにラプソディと名を変えて娼婦になるが、不思議な力を持つ「歌い手」となる訓練を受けて娼婦から足を洗う。

しかし町の権力者ミカエルは美しいラプソディが自由になる事を望まず、彼女を我が物にしようと手下を差し向ける。

ミカエルの手を逃れようとしたラプソディは、たまたま通りかかったアクメドとグルンソルの二人組の男に助けを求めるが、この二人にもまた大変な事情があった。

ラプソディは恐るべき悪霊フドールの手から逃れようとしていた二人と一緒に地中に逃れ、世界の源となる地の中を進み、身体を焼かれて無垢な身体に生まれ変わり、そして到着した場所は千年後の世界、グウィディオンが悪霊フドールと戦っている世界だった。


様々な伝承を散りばめながら、思わぬ展開で物語が進みます。お互いにサムでありエミリーであるという事に気が付かぬままめぐり逢った二人が、悪霊フドールの魔手を逃れながら一緒に行動し、運命に導かれるまま惹かれあい結ばれるというところが、冒険ファンタジィというよりもラブ・ロマンスで良いですね。

作者の盛り上げ方が上手くて、ついにグウィディオンがラプソディをエミリーだと気づく場面は、今まで管理人が読んだファンタジィの中で一番ロマンチックな場面だったと思います。

しかもその場面が物語のクライマックスではないところが良く練られているように思います。

主人公ラプソディが素直に好感が持てる絶世の美女で、その彼女と魂の伴侶となっているグウィディオンも渋くて格好が良いし、悪役もひねっていない純粋な悪という点が分かりやすい。

物語の基本は冒険ファンタジィのお決まりの善と悪の対決ですが、そこにラプソディとグウィディオンの運命で結ばれた愛があり、更には予言と伝説に満ちた不思議な世界が描かれていて、実に読み甲斐が有るファンタジィです。

     

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