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デボラ・マクギリヴレイ「ハイランドの魔法の夜」の感想です。

デボラ・マクギリヴレイ「ハイランドの魔法の夜」☆☆☆

ハイランドの魔法の夜

強大なイングランドがスコットランドを征服している時代、スコットランド・リングレンの女男爵アイシーンは、スコットランド貴族ながらエドワード1世のお気に入りだった後見人を亡くし困っていた。

夫も後見人も跡継ぎもいない女城主のアイシーンには、スコットランドに侵攻してきたイングランド王エドワード1世から自らと自分の領民たちを守る術がない。

そこでアイシーンが思いついたのは、見知らぬ男性を城に連れ込んで薬草と魔法で正体をなくさせて契り、その男性との間に出来た子供を後見人の子供と偽ってエドワード1世の情けにすがることだった。

アイシーンは少々知恵の足りない双子の弟たちに見知らぬ男性を城に連れてくるよう命ずるが、弟たちが酔わせて連れてきた男ダミアンは見たこともないほど美しい戦士で、アイシーンはダミアンに心を奪われてしまう。

一方、気がつくと見覚えのない部屋に監禁された上、薬草の影響で朦朧とするダミアンは、眼の前に立つ美しい女性を見て驚くと同時に歓喜に震え、その女性の名を口にしてしまう。

その女性はダミアンが夢の中で幾度となく出会い、彼に生きる希望を与えてくれながら、彼の従兄弟であり主君でもあるシャロンと深い愛情で結ばれ手が届かない存在となってしまったグレンローガの女城主タムリンだった。

夢の中で出会い愛し続けていた女性タムリンが、主君シャロンと結ばれた事に穏やかならぬ気持ちを抱いていたダミアンは、混濁した意識の中でアイシーンをタムリンと思い込み、アイシーンが自分に向ける視線に喜びを感じる。

しかしアイシーンはダミアンがエドワード1世配下の騎士である事を知り、ダミアンが口走ったタムリンの名前を聞いて愛してはいけない男性を愛してしまった事を悟って、ダミアンの記憶を消してシャロンの元に送り届けた。タムリンはアイシーンに瓜二つの従姉妹だった。

その数日後、ダミアンがシャロンとともに再びリングレンを訪れる。

そしてダミアンこそが、エドワード1世の命によりリングレンの後継者に指名された事をアイシーンに告げる。


中世スコットランドを舞台にして、イングランド王エドワード1世配下の騎士とスコットランドの女領主とのロマンスを描いたファンタジックなヒストリカル・ロマンスです。

あまり深い内容の作品では有りませんが、魔法が絡んでいる物語なので奇抜な話にそれ程違和感を感じません。

管理人はなかなか楽しめました。

主人公のアイシーンとダミアンは、それぞれがいとこのタムリンとシャロンに微妙な劣等感のようなものを持っています。

更にダミアンは瓜二つのアイシーンとタムリンを間違えたりしますが、そんな二人が誤解を乗り越えて結ばれていく話は、タムリンとシャロンが結ばれる前作「ハイランドの霧の魔法」よりも盛り上がるような気がします。