ドナ・アンドリューズ「恋するA・I探偵」☆☆☆

恋するA・I探偵

人格を持つに至ったA・I(人工知能)というと、SF作品の中では何でも知っている理性的な存在だったり、人間に敵対するように行動する存在だったりする事が多いのですけど、この作品の主人公の女の子型AIチューリングは、自分を作ったプログラマーのザックに秘かな恋心を抱く、感情を持った乙女チックなA・Iです。

この作品は、そんなチューリングが失踪したザックの行方を探して、他のA・Iたちや人間の協力を仰ぎながら調べているうちに、IT企業ユニヴァーサル・ライブラリー(UL社)を取り巻く陰謀を暴くというユーモラスな雰囲気の小粋なミステリィです。

遊び心のあるプログラマーのザックが推理小説をプログラムに組み込んだ結果、推理力とユーモアと感情のようなものを持つに至ったチューリングがなかなか魅力的な女性です。

彼女以外にもチェスに精通したA・Iのキング・フィッシャーや、法律を担当するサーズデイ、投資向けA・Iのジョン・ダウなど、それぞれに個性的なA・Iが登場します。

またチューリングは非常に優れたA・Iですけど、あくまでも電脳空間に存在する知性で、何かを触ったり動かしたり出来るわけではありません。

そんな彼女の手助けをするのが、秘書のモード・グレアムとUL社のコピー係ティム・ピンコスキの二人。

チューリングがA・Iだと知っているモードと、人間だと思い込んでいるティム、それにチューリングが感情を持っていることを信じないザックなど、登場人物も上手に描かれています。

とても楽しめるSFミステリィです。


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