野村胡堂文学賞受賞作
野村胡堂文学賞は、「銭形平次捕物控」の作者として知られ、また日本作家クラブの初代会長でもあった野村胡堂氏を顕彰する目的で、日本作家クラブが創立60周年記念として創設した歴史・時代小説の文学賞です。
以下は受賞作の一覧です。
第12回(2024年)
武内涼 : 厳島
“戦国三大奇襲”に数えられる「厳島の戦い」。兵力わずか四千の毛利元就軍が二万八千の陶晴賢軍を打ち破った名勝負の影には、壮絶な人間ドラマがあった。謀略で勝利した元就と、義を貫いて敗れた晴賢……対照的な二人の武将を通して人間の矜持を問う! 大藪春彦賞受賞の気鋭が放つ、慟哭必至の歴史巨編。
(「内容紹介」より)
第11回(2023年)
天野純希 : 猛き朝日
平安末期。十二歳の少年・駒王丸は、信濃国木曽の武士・中原兼遠の養子として、自然の中でのびのびと育つ。兼遠の息子たちとも実の兄弟のように仲良く過ごすが、彼は父と母の名も自分が何者なのかも、いまだ知らずにいた。ある日、駒王丸はささいなきっかけから、同じく信濃の武士の子・根井六郎と喧嘩になる。だが、同等の家格であるにもかかわらず、六郎と根井家当主が後日謝罪に訪れる。二人は畏れ多そうに深々と頭を下げて言う。「駒王丸殿はいずれ、信濃を束ねる御大将となられる御方。我ら信濃武士は、ゆくゆくは駒王丸殿の旗の下に集わねばならぬ」初めて知る実父の存在、自らの壮絶な生い立ち。駒王丸、のちの木曽義仲の波乱の生涯が始まろうとしていた。類い希なる戦の腕で平家を追い落とし、男女貴賤分け隔てない登用で、頼朝・義経より早く時代を切り拓いた武士。彼が幕府を開いていれば、殺戮の歴史はなかったかもしれない。日本史上最も熱き敗者、「朝日将軍」木曽義仲の鮮烈なる三十一年。
(「内容紹介」より)
第10回(2022年)
蝉谷めぐ実 : おんなの女房
ときは文政、ところは江戸。武家の娘・志乃は、歌舞伎を知らないままに役者のもとへ嫁ぐ。夫となった喜多村燕弥は、江戸三座のひとつ、森田座で評判の女形。家でも女としてふるまう、女よりも美しい燕弥を前に、志乃は尻を落ち着ける場所がわからない。私はなぜこの人に求められたのか――。芝居にすべてを注ぐ燕弥の隣で、志乃はわが身の、そして燕弥との生き方に思いをめぐらす。女房とは、女とは、己とはいったい何なのか。いびつな夫婦の、唯一無二の恋物語が幕を開ける。
(「内容紹介」より)
第9回(2021年)
砂原浩太朗 : 高瀬庄左衛門御留書- 再読度 ☆☆☆:読後感 ☆☆☆
神山藩で、郡方を務める高瀬庄左衛門。50歳を前にして妻を亡くし、さらに息子をも事故で失い、ただ倹しく老いてゆく身。残された嫁の志穂とともに、手慰みに絵を描きながら、寂寥と悔恨の中に生きていた。しかしゆっくりと確実に、藩の政争の嵐が庄左衛門を襲う。
(「内容紹介」より)
第8回(2020年)
今村翔吾 : 八本目の槍
安土桃山時代の見方が変わる! 誰も書かなかった三成が、ここにいる!盟友「賤ケ岳七本槍」の眼を通して、浮かび上がる三成の真の姿とは。過酷な運命を背負った七本槍たちの葛藤、三成との相克そして信頼が、巧みな構成のなかに描かれ、三成の言葉には、千年先を見通した新しき世への希望が滲む。はたして、戦国随一の智謀の男は、何を考え何を思い描いていたのか。凄まじき〝理〟と熱き〝情〟で、戦国の世に唯一無二の輝きを放った武将の姿を、史実の深い読みと大胆な想像力で描く傑作。吉川英治文学新人賞受賞。
(「内容紹介」より)
第7回(2019年)
木下昌輝 : 絵金、闇を塗る
幼少時より絵の才能を発揮し、狩野派の技法を異例の早さで修得した天才絵師・弘瀬金蔵。通称・絵金と呼ばれた男は江戸から故郷の土佐に戻り、土佐藩家老のお抱え絵師となるも、仕組まれた事件により追放される。独自の美を追求した絵金は、土俗的で血みどろの芝居絵など見る者を怪しく魅了する作品を描き続けた。その絵に翻弄された男たちの生と死から芸術の魔力が浮かび上がる傑作時代小説。
(「内容紹介」より)
第6回(2018年)
秋山香乃 : 龍が哭く
時は幕末、未曽有の財政難に苦しむ長岡藩を救いたい一心で、河井継之助は備中松山藩の山田方谷に弟子入りを申し込む。 方谷のもとで経世済民の教えを学ぶかたわら、継之助は会津藩の頭脳・秋月悌次郎や仙台藩の隠密・細谷十太夫、のちに武器商人となるエドワード・スネルらと親交を深め、やがて長岡藩において軽視できない存在になっていく。 しかし大政奉還、戊辰戦争といった時代の渦に、長岡藩はいやおうなしに巻き込まれていくことになり――。 司馬遼太郎が『峠』で書いたのとは違ったかたちで、一人の人間としての河井継之助を鮮やかに描き出した、著者渾身の歴史小説。
(「内容紹介」より)
第5回(2017年)
熊谷敬太郎 : 吼えよ 江戸象
将軍吉宗の時代。シャム国から取寄せた象を長崎から江戸まで移送せよとの命がおり、象使いの少女・千代と、本道医・豊安の長い旅路が始まった。神経質な象のために道中は掃き清められ、橋には苔が敷き詰められるなど街道筋の村々は大わらわ。吉宗の鼻をあかそうとする一群も暗躍。はたして、無事、象は江戸にたどり着けるのか…。
(「内容紹介」より)
第4回(2016年)
吉川永青 : 闘鬼 斎藤一
なぜ彼はそこまで"闘い"に心酔し、鬼と化したのか。十代の終わり、些細な喧嘩から人を殺めた斎藤一は、斬る悦びに目覚め、誰もが恐れる新選組最強の剣士となった──。命懸けで仕掛けた芹沢鴨暗殺や池田屋襲撃など、血なまぐさい事件を重ねてきながら激動の幕末を駆け続けた男の生き様。息を呑む展開、手に汗握る剣戟場面、胸を震わせる結末。注目の正統派時代作家による、渾身の長編。
(「内容紹介」より)
第3回(2015年)
鳴神響一 : 私が愛したサムライの娘
八代将軍徳川吉宗と尾張藩主・徳川宗春の対立が水面下で繰り広げられる元文の世。 尾張徳川家に仕える甲賀忍び雪野は、幕府転覆を謀る宗春の願いを叶えるべく長崎へ向かった。出島の遊郭へ太夫として潜入した彼女は、そこで蘭館医師・ヘンドリックと運命的に出会い、やがて二人は惹かれ合っていく――。 忍びの女と異国の男の運命の愛を、力強くも繊細な筆致で描き切った歴史時代小説! 北方謙三、今野敏、角川春樹、全選考委員満場一致で第6回角川春樹小説賞を受賞。
(「内容紹介」より)
第2回(2014年)
高橋英樹 : 高橋英樹のおもしろ日本史
芸能界きっての“歴史通"である高橋英樹による痛快歴史エッセイ!俳優・高橋英樹氏がこれまで時代劇や大河ドラマで演じてきた人物や、歴史ドラマにまつわるさまざまなエピソードを紹介。“俳優ならでは"の視点で自身が演じた歴史上の人物を語っていく本書は、これまでの歴史本とは一線を画すユニークな内容になっている。
(「内容紹介」より)
第2回(2014年)
塚本靑史 : サテライト三国志
本書は曹操、関羽、張飛、劉備などの英雄豪傑を引き立てる脇役を通して、もうひとつの「三国志」を描く試み。184年の黄巾の乱から280年の西晋の成立までに題材を取り、第1章・張角(太平道の教祖で、黄巾の乱の首謀者)から第50章・司馬炎(西周の初代皇帝)まで50人の群像を描いた。
(「内容紹介」より)