大沢在昌「新宿鮫」☆☆☆
新宿警察署防犯課の刑事鮫島は、元々はエリート・キャリアでありながら、強すぎる正義感と警察官としての仲間意識の希薄さから警察内で浮いてしまい、公安警察内部の熾烈な派閥争いに巻き込まれて、警察を揺るがすようなスキャンダラスな書類を手に入れたことから干され、警察庁から新宿署長預かりのような形で防犯課に配属されている。
極めて優秀ながら相棒がいない一匹狼の鮫島は、警察にも犯罪者にも容赦なく当たるために「新宿鮫」と異名をとり恐れられていた。
その鮫島が今追っているのは密売銃を作る男・木津。
木津が作った銃で死人が出ているが、狡猾な木津は銃の製作場は誰にも明かさず、逮捕されても刑期があければ又密造を始める。
密造銃の提供を止めさせるには、木津の工場を突き止めなくてはならない。
一方で新宿では、警察官を狙った連続殺害事件が発生していた。
人気アクション・サスペンス・シリーズの第1作目です。タイトルを見て日本的な情念に満ちた暗いハードボイルドを思い浮かべましたが、読んでみると大分印象が異なる警察小説です。
まず主人公の鮫島が良いです。警察内で浮いている一匹狼ではありますが、世を拗ねたニヒルな男ではなく、何が起きても動じないスーパーヒーローのタフガイでもない。もっと普通の警察官です。
鮫島の上司で防犯課の課長桜井の方が、かえって世捨て人のスーパー警察官という感じが強いです。
鮫島の14歳年下の恋人で気の強いロックシンガーの晶は、ある意味類型的なヒロインという印象を受ける女性ですけど、殺伐となりがちなハードボイルドのヒロイン役としては大切な役どころを決めています。
ともかく作品に緊迫感とスピード感があって、警察内部の確執も分かりやすく、面白いハードボイルド・サスペンスでした。
もっと早く読めば良かった。