オードリー・ニッフェネガー「きみがぼくを見つけた日」☆☆☆

きみがぼくを見つけた日

5歳の時に突然タイム・トラベルをしてしまう時間障害にかかったヘンリー。

遺伝子に問題があるようで、強いストレスを感じると、いきなり違う時代、違う場所に身体一つでタイムトラベルをしてしまう。

自分ではこの状況をコントロールすることが出来ず、人にも説明できない能力と折り合いをつけながら、何とか28歳の今日まで生きながらえてきた。

ある日、刹那的な生活をおくりながらシカゴで図書館司書として働くヘンリーの前に、20歳の美しい女性クレアが現れ、喜びの表情を浮かべながらヘンリーに話しかけて来た。

ヘンリーにはクレアに見覚えがなかったが、クレアは明らかにヘンリーを知っている様子で、そんな彼女と話しているうちに、ヘンリーは未来の自分が幾度となく彼女の前に姿を現していたことを知る。

クレアは6歳の時に彼女の前にタイムトラベルして来たヘンリーと出会い、それ以降数年おきに出現するヘンリーと過ごし、いつしかヘンリーに恋心を抱いていた。

18歳の最後の出会いの後、いつかは又ヘンリーと再会することを知っていたクレアだったが、リアルタイムで生きている愛しいヘンリーについにめぐり逢えた事に感動し、ヘンリーもそんなクレアを知って強く惹かれていく。


自分が意図しない時に、いつとも知れぬ過去や未来に丸裸で移動してしまうというタイムトラベラーの苦悩と、彼の障害を知りながら結婚した女性との愛の物語を、ヘンリーとクレアのそれぞれの立場から二人称で語られた作品です。

タイムトラベルのパラドックスや騒動を描くのではなく、人には言えない障害を持つ男性とその妻の数奇な人生を描いた美しい物語に管理人は心を打たれました。

ここまで人を愛することが出来るというのはスゴイ事ですね。


原題は「THE TIME TRAVELER'S WIFE」で、「タイムトラベラーズ・ワイフ」のタイトルで単行本が出版されていましたが、何故か文庫化された時に改題されたようです。前の方が分かりやすいタイトルだと思いますけどね。

 

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