北原亞以子「蜩 - 慶次郎縁側日記」シリーズ ☆☆
慶次郎縁側日記シリーズ5作目の短編集で、「綴じ蓋」「権三回想記」「おこまの道楽」「意地」「蜩」「天知る地知る」「夕陽」「箱入り娘」「逢魔ヶ時」「不老長寿」「殺したい奴」「雨の寺」を収録しています。
「意地」が良かったですね。
創作は芸術だという感性を持つ若くて野心家の指物師政吉は、職人は使いやすい物を作らなくちゃいけないという親方栄五郎の考え方に馴染めない。
ある時政吉は、自分が作った物の事で栄五郎と口論となって栄五郎の元を飛び出してしまうが、政吉と好き合った仲の栄五郎の一人娘おさちは、栄五郎と政吉の間に挟まって気を使い衰退していく。
誰が良いとか悪いとか、北原作品は一方的に決め付けません。
恋人に心配をかけさせている政吉にしたって、親方に感謝していないわけじゃない。
でも意地を取ったら俺に何が残る、と考える若い政吉の心情も分かります。
こういう作品は本当に味があって良いですねぇ。