エドモンド・ハミルトン「スター・キング」☆☆☆
第二次世界大戦が終わって間もない頃、保険会社に務める普通のサラリーマン、ジョン・ゴードンが眠りに就こうとする頃に、彼の心に語りかけてくる奇妙な声があった。
声の主は20万年も未来の科学者で発明家のザース・アーンで、彼はジョン・ゴードンに精神の交換を申し入れてくる。
ザース・アーンの意識をジョン・ゴードンの体の中に、ジョン・ゴードンの意識をザース・アーンの体の中に移して、時空を超えてお互いの世界を短い間交換しようというのだった。
退屈な日々に飽きていたジョン・ゴードンはこの申し入れを受け容れ、20万年未来のザース・アーンの体に乗り移る。
しかしその時代は戦乱の時代だった。
しかもザース・アーンは銀河を支配する帝国の第二王子という重要人物で、帝国と敵対する暗黒星雲の戦艦がザース・アーン=ジョン・ゴードンを狙って、ザース・アーンの研究所を襲撃してくる。
帝国軍の艦船が救援に現れて、からくも助かったジョン・ゴードンだったが、ザース・アーンの助手は暗黒星雲の兵士に殺害され、ジョン・ゴードンの正体と事件の真相を知る者のいないまま、危険な研究所から帝国の主星に連れて行かれてしまい、元の世界に戻る道を閉ざされてしまう。
そしてジョン・ゴードンは帝国の首都で出会った同盟国の君主でザース・アーンの婚約者リアンナ姫と恋に落ちてしまう。
いかにもアメリカ的で楽天的な明るい単純明快なスペースオペラの傑作です。
恋と冒険、何万の星々の王、20万年も未来の世界。何という胸弾む世界。これぞSF!これぞスペースオペラ!という胸踊る冒険SF小説です。
荒唐無稽といえば間違いなくそうですけど、面白ければ多少話に矛盾があろうともどうでもいいと思わせてくれる作品です。
今から20万年も先の科学力がこの程度?何と真空管を使っている?思考スプールやら何やらえらく陳腐な小道具。
流石に1950年代に書かれたSFですけど、この作品のワクワク感はたまりません。頭を使わずに流れに身を任せて夢中になって読むべき作品です。
管理人がスペースオペラでお薦めするとしたら、まずはこの作品と続編に当たる「スターキングへの帰還」ですね。