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浅田次郎 「鉄道員(ぽっぽや)」の感想です。

浅田次郎「鉄道員(ぽっぽや)」☆☆☆

鉄道員(ぽっぽや)

「鉄道員」「ラブ・レター」「悪魔」「角筈にて」「伽羅」「うらぼんえ」「ろくでなしのサンタ」「オリヲン座からの招待状」の8編を収録した平成の泣かせ屋・浅田次郎の真骨頂ともいうべき傑作揃いの、涙なくしては読むことが出来ない短篇集です。

第117回(平成9年度上半期)の直木賞受賞作。

直木賞というのは必ずしもその作家の最高傑作が取るわけでは有りませんけど、数ある素晴らしい浅田作品の中からこの作品が直木賞というのは管理人としては納得です。

この短篇集の中でどの作品が好きかは色々なご意見が有りましょうけど、やはり管理人は表題作が1番ずん!ときました。

鉄道員という職業に意地と誇りを持ち、妻子の不幸にも涙ひとつ流さず愚直なまでに勤め上げた一人の鉄道マン(ぽっぽや)の生き様と、それを暖かく見守る周囲の人々。

そんな彼のもとに現れる少女は、まさしく神から彼に与えられた人生のご褒美なんでしょうか・・・。

子を思う父親の心情と父親を慰める娘の心根が何とも感動的です。

きっとこうなると思いつつ、そしてその通りに物語は進み、それでいて読みながら涙が溢れてくるなんてね。

不法入国した中国人女性と戸籍だけの結婚をしたやくざな男の物語「ラブ・レター」だって、現実感は全くないけど綺麗な話じゃあ有りませんか・・・。

兎も角、この本は絶対に通勤電車の中では読まない事を強くお奨めします。

管理人などはこうして文章を書きながら思い出すだけで不覚にも涙が湧いてくるくらいですから・・・。