柚月裕子「朽ちないサクラ」☆☆☆
大学卒業後東京で暮らしていた森口泉は、父が事故死した後シングルマザーとして育ててくれた母親と暮らすため故郷に戻り、米崎県警の広報広聴課職員として働いている。
そんな泉を含む県警の職員達は、朝から途切れなく続く苦情の電話応対に追われていた。
原因は地元の米崎新聞に掲載された一本の記事。
ストーカーに刺殺された平井市内の女子大生が、何度も平井中央警察署に相談していたにも関わらず警察はまともに対応をせず、被害届の受理もせず、ようやく捜査を約するものの多忙を理由に受理期日を一週間延長し、その二日後に女子大生は殺されたが、受理期日を延長したのは警察署職員の慰安旅行を控えていたためだというスクープだった。
市民からの抗議電話に対応しながらも、泉には気にかかることがあった。
警察学校の同期で親しくしている平井中央警察署生活安全課の磯川から、慰安旅行の土産だと菓子をもらった事を、高校時代の親友で米崎新聞の警察担当記者の津村千佳に話した事があった。
その時千佳には口止めをし、千佳も記事にはしないと約束してくれたが、本当に大丈夫なのか?
二人だけの行きつけのレストランで会った千佳は、記事を書いたのは自分ではないと否定するが、泉はそれを信じきれない。
泉が自分を疑っていることを察知した千佳は「この件には、何か裏があるような気がする」とつぶやき、事件を調べてみると言ったが、その一週間後に遺体となって発見された。
ただ一人の親友を信じきれずに失った泉は、事件の大元となった平井中央署の磯川とともに独自の調査を開始するが・・・。
重厚感を感じる柚月裕子の警察小説です。
登場する人物の描写が巧みで、親友を失った主人公・泉の寂寥感、悔恨、怒りがしみじみと伝わってきます。
それだけになかなか非情な物語に仕上がっていますけど、全体的なイメージが後ろ向きでない感じがして、そこが良いですね。
読んでいるうちに事件の真相が漠然と想像出来てしまいますが、謎解きを主眼としていないサスペンス小説ですので、そこはあまり気になりませんでした。