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柚月裕子 「凶犬の眼」の感想です。

柚月裕子「凶犬の眼」☆☆☆

凶犬の眼

広島県の田舎町・比場郡城山町の駐在所に勤務する日岡秀一巡査は、呉原東署の暴力団係の刑事だったが、暴力団の抗争事件と上司だった警察の問題児・大上章吾に関しての警察上層部からの命令に背き、懲罰人事を受けて島流しの状況にあった。

親戚の法事の帰りに、呉原にいた時に世話になっていた小料理屋の女将・晶子の店に立ち寄った日岡は、顔なじみの暴力団組長の一之瀬と瀧井がどこか見覚えのある男と会食中と聞いて挨拶に向かった。

二人の組長が広島の建設会社の社長だと言う男の顔を見た日岡は、男が大阪で発生した日本最大の暴力団・明石組の分裂と抗争で、明石組四代目暗殺の首謀者として指名手配を受けている国光寛郎だと気づく。

そのことに感づいた国光は、店を出ようとする日岡の前に現れ、「自分にはまだやることが残っているので、それまで待って欲しい。その決着が付いたら必ず日岡に手錠を嵌めてもらう。」と語る。

悩みながらもとりあえず様子を見ることにした日岡だったが、その2ヶ月後、日岡の前に城山町で開発中のゴルフ場の工事責任者として国光が現れた。


日本推理作家協会賞を受賞した「孤狼の血」の続編となる警察小説、というかヤクザの抗争劇を描いたサスペンス小説です。

前作も迫力のある骨太の男たちを描いた作品でしたが、この小説も山口組と一和会の抗争事件を下敷きにしたヤクザ同士の抗争から、ヤクザとしての仁義を通そうとする男の生き様を描いた作品になっています。

何となく「仁義なき戦い」から「網走番外地」に変わったような印象ですね。

今の日本で飛び道具を使った組織的な殺し合いをするのは暴力団くらいなものでしょうから、そういう世界を舞台にした戦いにはリアリティを感じます。

その上で現実に居るのかは分かりませんが、私利私欲に走らず、男として仁義を通そうとする国光という人物の大きさは、共感できるかどうかは別としても魅力的ではあります。

そんな中で真面目な警官から清濁併せ呑む警官に変わっていく日岡の物語は、是非続きが読みたいものだと思わせてくれます。

とても面白い作品でした。