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貴志祐介 「硝子のハンマー」の感想です。

貴志祐介「硝子のハンマー」☆☆☆

硝子のハンマー

株式上場を控えた介護サービス会社「ベイリーフ」の社長・頴原昭造が、社長室で一人仮眠中に何者かによって後頭部を殴られ殺された。

「ベイリーフ」は12階建てのオフィスビルの最上階から3フロアを占めているが、事件が発生したのは日曜日の昼で出勤している社員は限られていた。

更に殺害現場の社長室は、前の廊下に監視カメラが設置され、3名の役員秘書の目を盗んで部屋に入ることが出来ず密室状態だった。

唯一人、誰にも見られることなく社長室に入れたのは、社長室に隣接する専務室で仮眠をとっていた専務・久永篤二だけで、久永は眠っていたと容疑を否認するものの逮捕される。

久永の弁護士・青砥純子は久永の無実を証明すべく、知人に紹介された防犯コンサルタントの榎本径に密室で起きた事件の謎の解明を依頼するのだが・・・。


「防犯探偵・榎本シリーズ」の第1作目の作品で、第58回(2005年)の日本推理作家協会賞を受賞したミステリィです。

2部構成になっていて、第1部は「ベイリーフ」の人間関係や、純子と径が様々な可能性をそれぞれ考え検証して、真実に辿り着こうとしている姿を中心に描き、第2部では犯人の生い立ちや事件を起こす背景を倒叙形式で描いています。

物語はきちんとしたトリックが使われ本格ミステリィの味わいがありますけど、主人公の直情径行的で気の強い弁護士の純子と、どこか犯罪者の匂いがする径のデコボコ・コンビの行動はユーモラスで、どこか軽さを感じます。

犯人が殺人に至る動機に関しては、無理して殺す必要もないように思いますが、ミステリィでそれを言っちゃお終いですからね。