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貴志祐介 「新世界より」の感想です。

貴志祐介「新世界より」☆☆☆

新世界より

人々が「呪力」と呼ばれる超能力を身に着け、それぞれ孤立した集落で暮らしている千年後の日本を舞台にした、第29回(2008年)日本SF大賞受賞のSF小説です。


注連縄に囲まれた集落「神栖66町」で暮らす12歳の少女渡辺早季は12歳で無事に呪力が発現して、小学校である「和貴園」を卒業して呪力の訓練を行う「全人学級」に入学した。

この社会には子どもたちに知らせない知識が多くあり、立ち入ってはいけない場所があり、集落の外に出ることは危険で、人間に災いをもたらす悪鬼や業魔が存在していて、人々はバケネズミと呼ばれる醜悪な生物を召使として使役している。

また呪力が正しく発現しない子どもは、いつの間にか教室から姿を消してしまう。

ある日、同級生たちと利根川上流にキャンプに出かけた早季は、先史文明の遺物ミノシロモドキを発見する。

まるで生き物のように見えるミノシロモドキだが、その正体は「国立国会図書館つくば館」の端末装置であり、早季たちはミノシロモドキから人類が手に入れた呪力が元になった先史文明の崩壊、悪鬼や業魔の正体、現在のそれぞれが隔離された集落で構成される社会が作られるまでの歴史など、秘密とされていた事実を教えられてしまう。


人類にもたらされた超能力、それが原因で崩壊した文明、新たに誕生した閉鎖的な社会、遺伝子改良で生み出されたという知能のある使役動物バケネズミ、突然出現する悪鬼や業魔などを描いて、風刺に満ちた物語が展開していきます。

テーマがテーマだけに心地よい内容とは言えない作品ですが、それでも最終的には未来に希望を感じさせるところがあって、日本SF大賞受賞に納得の大作です。

面白い作品でした。