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井上夢人 「ダレカガナカニイル・・・」の感想です。

井上夢人「ダレカガナカニイル・・・」☆☆☆

ダレカガナカニイル・・・

山梨県の小さな村にあるオウム真理教を思わせる新興宗教の道場の前に、道場の立ち退きを要求する地元の反対派住民が集まり、信者たちと衝突する。

そんな騒動の中で突然発生した道場の火事と教祖の死。

道場の警備に雇われていた僕・西岡悟郎は、訳も判らずに不思議な現象に巻き込まれてしまう。

僕の頭の中で何かが話しかけてくる。僕は気が狂ったのか?僕の頭の中にいるのは女性のように思えるが、ひょっとしたら火事で死んだ教祖なのか?

警察は教祖が誰かに殺された疑いも有るとして捜査しているらしい。

この現象の原因が何か分かるかも知れないと現場に戻った僕は、そこで教祖の娘の葉山晶子と再会する。


主人公の西岡悟郎は葉山晶子に一目で惹かれてしまいます。

悟郎はどこにでもいそうな平凡な28歳の好青年。晶子は清潔で気持ちの真直ぐな純情可憐な美しい乙女。その二人の関係が何とも純愛物語風で微笑ましく、風情があって良い印象です。

不思議な力を持つ晶子と昌子に恋する悟郎、そして悟郎の頭の中にいる謎の存在は、そんな二人の関係に嫉妬します。

ミステリィの要素も確かにありますが、それよりも主人公の悟郎と晶子、それに悟郎の頭の中にいる何者との関係が興味深かった。

物語が主人公の病室から始まるので、何となく結末が想像出来てしまうのが少々残念な気もしますけど、それでもラストシーンは意外で、成る程と納得すると共にいささか切ない気持ちになってしまいます。

読んだ後でいつまでも余韻が残る素敵な作品です。