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船戸与一 「午後の行商人」の感想です。

船戸与一「午後の行商人」☆☆

午後の行商人

メキシコ自治大学に留学している青年香月哲夫は、メキシコの田舎町で強盗に襲われる。

それを救ってくれたのは、タランチュラという名の謎の老人だった。

行商人だというタランチュラに興味を抱いた哲夫は、頼み込んでタランチュラと一緒に旅をするが、彼と同行する中でさまざまな出来事に巻き込まれ、見失っていた自分の生き方について思いを馳せるようになる。


プロローグとエピローグは正直言って余分な印象ですが、日本人作家がこういう馴染みのない僻地を舞台にした冒険小説を書けるという事自体がすごいと思います。

骨格がキチンとした作品で、とても面白かった。

長い間虐げられてきた原住民族の反政府活動と、それを押さえ込もうとする治安警察の暗躍。そこに老人タランチュラの凄惨な復讐劇をからめて展開される骨太の冒険活劇は迫力があり、現代の法律など通用しない土地で繰り広げられる物語には、どこか懐かしい味わいを感じます。

期待した以上に面白い小説でした。