シオドア・スタージョン「人間以上」☆☆
人から蔑まれて生きてきた白痴の青年ローンには、人の心の中を探るテレパシー能力や人の心を操ることが出来るという不思議な超能力があった。
それだけの力を持ちながらも、白痴のローンには自らの力を有効に使うことが難しい。
しかしそんなローンの元に、思念で物を動かせるテレキネシストの少女ジャニイ、瞬間移動ができる黒人の双子姉妹、広く深い知識を持つモウコ病の赤ん坊など、同じように不思議な力を持つ子どもたちが集まってくる。
実は彼らは人類(ホモ・サピエンス)が更に進化して生まれた超人類、超能力を持つ5人が力を合わせて1人になる新人類の集団人(ホモ・ゲシュタルト)だった。
しかし誕生したばかりの、このホモ・ゲシュタルトには、集団のリーダーであり頭脳でもあるローンが白痴であるという重大な欠陥があった。
一人一人は弱いけれども、何人かが集まると思いもよらぬ力を発揮するという内容の作品自体はありきたりという気がしますが、この作品は一見弱者に見える不具者や異端者が、実は超能力者だったというところが新しい視点になっています。
特異な能力を持つけれども、普通とは違っているということで差別を受ける存在が、実は人類の新たな未来を築くという描き方に、人間性への風刺を感じて興味をそそられます。
この作品は3部構成からなる新人類の誕生をテーマにしたSF小説の古典的名作ですが、なかでも第1章にあたる「とほうもない白痴」は読ませてくれます。
第2章「赤ん坊は3つ」はミステリィっぽい展開と分かりづらい日本語で少し戸惑いましたが、興味深い展開になります。
第3章の「道徳」では、前半の詩情あるスタージョンらしさと、後半のいかにも楽天的なアメリカ人気質が混在して、やっぱりアメリカのSF小説だなぁと感じました。
ただ全体的には、スタージョンの代表作だという期待が大きすぎたせいか、どこか物足りなさを感じてしまいました。
面白いテーマなだけに少し残念です。