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シオドア・スタージョン「夢みる宝石」の感想です。

シオドア・スタージョン「夢みる宝石」☆☆☆

夢みる宝石

残忍な養父に引き取られた8歳の孤児の少年ホーティは、蟻を食べたことがきっかけで父親にきつく折檻され、ただ一つの所有物だったボロボロの人形を抱えて、養い親の家から逃げ出した。

冷たい周囲の人たちの中で、ただ一人彼に親切にしてくれた女の子に別れを告げて、飛び乗ったトラックの中で出会ったのは、町から町へと移動するカーニバルの団員の矮躯の男女3人。

リーダー格の美しい女性ジーナは、ホーティを女装させてジーナの従姉妹という事にして仲間に迎い入れるが、カーニバルの団長モネートルには出来るだけ近づかないことを誓わせる。

かつては優秀な医師だったモネートルは、いつしか人間を憎悪するようになり、彼が見つけた意識ある宝石たちが生物のコピーを生み出す力を利用して、人間社会に禍を広めようと考えていた。

しかしモネートルは宝石と意思の疎通が出来ないため、それが出来る仲介者をカーニバルで国中を移動しながら探し続けていた。

ホーティこそが宝石から生まれた仲介者となる能力を持つ少年だと感じたジーナは、あえてホーティをモネートルの近くに置く事で彼の探索の目を逃れようと考える。

ジーナと同様の矮躯の女性に変装したホーティは、その姿のまま数年をジーナと共にカーニバルで暮らしていたが、ある時モネートルがホーティに何かを感じて声をかけて来た。


1940年代のアメリカのどこか怪しげな雰囲気が漂うカーニバルと、夢を見る生きた宝石が産み出した子どもが成長していく姿を描いた叙情的なSFで、普通の一人の女性として生きて行きたいと切望する矮躯の優しい女性ジーナが切ない物語です。

しかしジーナはモネートルの悪意に怯えながらも、彼の興味を別の方向に向けてホーティを何とか守ろうとします。

ホーティと同じ部屋で暮らし、彼を教え導くジーナは、自分の境遇を嘆きつつ純粋なホーティに慰めと愛を見出していきます。

しかしついにモネートルがホーティに関心を寄せた事を知ると、自らの危険を顧みずに愛するホーティをカーニバルの外に逃げさせます。

カーニバルという特殊な社会を主な舞台にして、邪悪な人間と人間ではない人間の人間性を描いた名作SFで、管理人が特に好きな作品の一つです。