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海堂尊「極北ラプソディ」の感想です。

海堂尊「極北ラプソディ」☆☆☆

極北ラプソディ

地方都市の医療崩壊の現状をエキセントリックに描いた「極北クレイマー」の続編になります。

前作は経営破綻した地方自治体(夕張市がモデル?)の中核病院における悲惨な現状と、そうした中で頑張っていた産婦人科を専門とする医師の医療過誤訴訟(これは福島で起きた産婦人科医逮捕事件が下敷きでしょう)から始まる現場の崩壊を描いていましたが、この作品は壊れてしまった地方の医療現場をどう建て直していくのかという問題を描いています。

もちろん安易な答えは用意されていない。

患者という立場に甘え、医療費の支払いを滞らせる人や、そういった人が亡くなった時に偉そうに騒ぎ出すマスコミなども登場する。

海堂尊の作品は、同じ舞台設定で幾つかの異なるシリーズが書かれ、それが全体として日本の医療の問題点をあぶり出す構図になっています。

どうも行き過ぎた保障、リベラル過ぎる考え方というのは、かえって物事を反対方向に押しやる力を持っているように思えます。

色々と考えさせてくれる作品でした。