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五十嵐貴久「安政五年の大脱走」の感想です。

五十嵐貴久「安政五年の大脱走」☆☆

安政五年の大脱走

彦根藩井伊家の部屋住みの若侍が、他藩の美しい女性に一目見ただけで恋に落ちた。

しかし身分こそ高けれども、養子に行くあてすらもない冷や飯喰らいの身の上では、無論妻にできるわけもなく、それから20数年の月日が流れる。

若侍は運に恵まれて冷や飯から彦根藩主となり、いつしか激動の幕末で巨大な権力を握る大老・井伊直弼となるが、直弼はある日憧れの女性に瓜二つの姫君を見かけた。

その姫が南津和野藩の美雪姫だと知った井伊直弼は、側近の犬塚外記を通じて側室にと申し入れるが、先方からは色よい返事が返らない。

直弼の胸中を察した非情な側近・長野主膳は、長州藩の支藩である南津和野藩に謀反の疑いをかけ、その嫌疑を晴らすことと引き換えに美雪姫を側室にさせるという無謀な計画を直弼に提言する。

かくして先代藩主の法要に集まった南津和野藩士51名と美雪姫はあらぬ嫌疑で捕らえられ、断崖絶壁に囲まれた難攻不落の山頂に閉じ込められてしまう。

武器もなく、道具もなく、周囲を彦根藩士たちに見張られた中で、義憤に燃える南津和野藩士たちの脱出劇が始まった。


時代小説版の大脱走です。

色々な意味であり得ない設定ですが、権力者におもねることなく、先代藩主に託された遺児・美雪姫を守ろうと身分を超えて協力する男たちの奮闘する姿が清々しい。

但し、管理人は実在の人物を登場させるこの手の話にはリアリティを感じられず、どうも今ひとつ感情移入が出来ずに、素直に楽しめない所があります。

敵役は全く架空の権力者だった方が分かりやすかったような気がします。

個人的には少しだけ残念でしたが、物語自体は面白かったです。