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五十嵐貴久「サウンド・オブ・サイレンス」の感想です。

五十嵐貴久「サウンド・オブ・サイレンス」☆☆☆

サウンド・オブ・サイレンス

中学の頃いじめにあっていた綾瀬夏子は、高校に入ってすぐに、無口で無愛想で、人の話を聞いていないような態度を示すクラスメート小野春香を知り、彼女をスケープゴートにすることで自分がいじめの対象にならないようにしようと思いつく。

夏子のさりげない言葉は、ただでさえ人付き合いの下手な春香の評判を落とし、春香はクラスの中で浮いた存在になっていくが、クラスに居場所がなくても毅然としている春香を見るにつけ、夏子の気持ちは落ち込んでいく。

そうしたある日、春香の友人で聴覚障害者の大森美紗と知り合った夏子は、春香も聴覚に障害を持っていることを知る。

聴覚障害者でありながらダンスに打ち込む美紗と仲良くなった夏子は、春香を仲間に入れようと、夏休みの間毎日彼女の家を訪れるのだが・・・。


ダンスに打ち込む聴覚障害者の少女たちと、彼女たちをサポートする健常者の少女の友情と軋轢と情熱を描いた青春物語です。

作中でも語られていますが、聴覚障害は障害者だと分かりづらいというのは、確かにその通りですね。

耳が聴こえないくらいと思いがちですが、実際にそういう人がダンスをするというのは大変な事で、そういう障害を持つ少女たちに焦点を当ててなかなか熱い物語になっています。

目標に向かって頑張る少女たちの姿が清々しくて、読後感がとても心地良い小説でした。