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篠田節子「純愛小説」の感想です。

篠田節子「純愛小説」☆☆☆

純愛小説

恋愛を主題にした4篇の短編を収録した短編集ですが、通り一遍の恋愛ではなく、もっと深く人間の生き方のようなもの、誰もが持つ思い込みと誤解の不思議さを、作者独特のブラックユーモアを交えて描いた作品が多かったように思います。


表題作「純愛小説」は、大手出版社のキャリア編集者の独身女性が、中学生の頃からお互いに影響を与えあってきた親友で広告代理店役員の男性の離婚騒動に巻き込まれていく物語。愛についての誤解と皮肉が効いています。

「鞍馬」は、父母が遺した土地・屋敷を独身の長女に渡した3人姉妹の次女が、フリースクールを開校する資金援助を求めたところ、長女が結婚詐欺に引っかかって全ての財産を失った事を知るという話。
サスペンス小説風味があるどこか切ない物語ですが、人生も立場によって随分と見方が変わるものだと改めて思いました。

「知恵熱」は大学に入って一人暮らしを始めた次男と、彼を案じているが実は子離れが出来ていなさそうな両親の話。次男の恋愛を知恵熱に例えているような両親の気分が、管理人にも何となく分かるような気がします。

「蜂蜜色の女神」は、一見すると非の打ち所のない可愛らしい妻を持つ30代の男性が、一回りも年上の女性と浮気・・・というよりも、彼女との性交に囚われてしまった姿を、メンタルクリニックの女性医師の目から描いた物語で、この短編集の中で一番主題に沿った内容の話になっています。

どの作品も印象深くて、流石に篠田節子はうまいなぁと思いました。