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恩田陸「夜のピクニック」の感想です。

恩田陸「夜のピクニック」☆☆☆

夜のピクニック

海と山が近くにある進学高・北高の年に一度の伝統行事が、朝8時から翌朝8時まで24時間かけて行われる「歩行祭」。

全校生徒が夜半の仮眠時間を除いて、ともかく80キロのコースをひたすら歩くというイベントは、地味ながらも北高生にとっては大切な行事となっていた。

3年生の甲田貴子にとっては最後の歩行祭となるが、彼女はある賭けを自分にしていた。

それは3年になってから同じクラスになった男子・西脇融と一言でも話すことが出来たら、彼に提案したいと思っていた事・・・。

大親友の遊佐美和子にも打ち明けたことがないが、実は貴子と融には秘密があった。

一方で融もまた、色々と鬱屈した気持ちを抱えている。そんな中で貴子や融の最後の歩行祭が始まった。


2005年の本屋大賞と吉川英治文学新人賞を受賞した青春物語です。

基本は貴子と融の物語になりますけど、それぞれの友人たちとの高校生活や様々な人間関係などが描かれていて、素直な青春群像が展開されていきます。

舞台となっているのが、かなりレベルが高そうな進学校ですので、登場人物の立ち居振る舞いが優等生で、また皆さん観察眼が妙に鋭くて、極端にバカっぽい人物は登場しません。

そんな中で行儀の良い恋愛や、そうでもない恋愛が語られていて、そういった雰囲気に管理人は、懐かしい青春の味を感じます。

24時間の出来事が淡々と語られている小説で、特にミステリィがあったり不思議な出来事が起きたりするわけではありませんけど、読み始めると止められない作品でした。

何というか毒気のない素直な青春ストーリーが心地よかったです。