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ロバート・マーフィ「森と池の物語」の感想です。

ロバート・マーフィ「森と池の物語」☆☆☆

今から40年以上前、管理人がまだ中学生だった頃に読んだ小説です。

ダトン動物文学賞という聞いたこともない文学賞を受賞した作品ですが、この文学賞の名前を40年以上経ってもまだ覚えていると言うくらい、この作品には感動しました。(ちなみにアニメのあらいぐまラスカルの原作「はるかなるわがラスカル」も受賞しているようですね)

まだ14歳の少年が親友と二人だけで、森と池のある別荘地に車で出かける場面から物語が始まります。アメリカって14歳の子供でも自動車が運転できるのかぁと、当時同じ年頃だった管理人は一瞬思いましたが、この小説の舞台となった時代は、それが出来る時代だったんでしょう。

その別荘地に住む管理人の老人に教わりながら、森の中を冒険してリス狩りをしたり、釣りをしたりするワクワクする冒険の時間。池で釣りをする二人の前で大きな魚が跳ね、親友が「ツバつけた」と叫ぶ。

要するにあの魚はオレのものだと言うことで、早くツバつけた方に優先権があるという少年たちの間での暗黙のルールになります。

少年は出遅れた事に悔しい思いをしますが、でもこの滞在の時には、結局魚は釣れませんでした。

休暇が終わって二人は一旦町に帰りますが、主人公の少年は次の休暇の時には親友を誘わずに一人でここに来ます。もちろん、親友より先にあの魚を釣り上げることが目的でした。

親友と来た時とは違って静謐な雰囲気を漂わせた森と池。

少年はあの大きな魚を釣ることに成功しますが、釣り上げた喜びよりも親友を裏切った自責の念にとらわれ、釣った魚を池に戻してすすり泣きます。

自己嫌悪から内省的になり、森の中を一人歩く少年が出会う自然と一体になった静かな黒人青年。その青年の佇まいに少年は大きな影響を受けます。

豊かな自然に囲まれた別荘地で、貧しいけれども自然と一体となった生活をする人たちと触れ合い、様々な事を学ぶうちに大人へと成長していく少年の姿を情感たっぷりに描いた作品です。

細かい内容は覚えていませんけど、この作品のリリシズムと美しさに感動したことは良く覚えています。

本を読み出すと早く結末まで読みたい管理人が、生まれて初めてもっと読んでいたい、この作品の世界にもっと浸っていたいと思った作品です。

当然絶版ですけど、感受性の強いあの頃に、こうした優れた作品に出会えたことは本当に運が良かったと思います。