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半村良「女神伝説」の感想です。

半村良「女神伝説」☆☆☆

女神伝説

家庭に恵まれず、就職試験にも落ちて失意に沈む貧しい大学生の志島純次は、高校生の頃にアッシリアの女神サバを模して自作した女神像を自身の神として崇拝していた。

就活に失敗が続く純次だったが、ささいな事故をきっかけにして裕福な実業家で絶世の美女・古藤嵯峨子と知り合い、嵯峨子からうちの会社に来ないかと誘いを受ける。

ある日、金持ちのボンボンである友人に誘われて遊んだ純次は、境遇の違いから自分を蔑むような友人の態度に屈辱感を感じ、サバ神に「サバの女神よ。俺を金持にしてくれないか。」と祈った。

その後嵯峨子からもらった名刺を頼りに嵯峨子を訪れた純次は、嵯峨子から会社社長をやらないかと誘われる。

嵯峨子は純次を様々な形でサポートし、いつしか二人は恋人となり、純次は若くして巨万の富を得るようになるが、純次が嵯峨子とは異なる清楚な魅力を持つ若い女性・音川春子と出会い惹かれていくようになると・・・。


面白い作品でした。

もともと神を信じていない青年が、古い遺跡の女神像を見てから、それを模して自分だけのための女神像を作って崇めるという発想が好きです。

自分で作った神像が男神ではなく女神という点がミソですね。

美しい女神と交わるということは、若い男なら誰しも一度くらい想像したことがあるんじゃないかと思いますけど、それをファンタジィ世界の物語ではなく、現実の生活に即した風に描くというのが半村良らしいと思いました。

描き方によってはものすごく陳腐になりがちなテーマですけど、どこか明るさがあって、人間的な可笑しみが感じられる作品です。

おしまいの方で、出会ったときにはあれ程清純な少女だった主人公の恋人が、段々と世帯じみた世のカミさんみたいになっていくのを暗示しているような書き方が、どんなに理想的な女性でも所詮は人間なんだと言ってるようで良いですね。