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ロバート・ゴダード「リオノーラの肖像」の感想です。

ロバート・ゴダード「リオノーラの肖像」☆☆☆

リオノーラの肖像

パワーストック卿ハロウズの孫娘として育てられたリオノーラの毎日は陰惨で孤独で、深い謎に包まれたものだった。

祖父ハロウズは陰気な老人で、リオノーラを悲しみに満ちた視線で見つめている。

祖母は激しい憎悪を隠そうともせずにリオノーラにつらく当たる。

そしてリオノーラを無視するかの様に振舞う使用人たち。

それはリオノーラが私生児だからなのか?

祖父が亡くなり、祖母が亡くなった後に、リオノーラの前に現われた男から語られるハロウズ家とリオノーラの両親の物語。そして明らかになっていくリオノーラの謎。


イギリスの地方貴族の邸宅を主な舞台とした物語は、どことなく郷愁を誘い高い格調を感じます。

話の内容からすれば暗い情景であるはずが、何故か晴れ渡る青空が目に浮かぶような気がします。

登場人物がそれぞれ回想を語る形式で綴られる物語は、幾層にも重なった謎を解明していき、戦争と当時の社会が生んだ悲劇を効果的に映し出します。

運命に翻弄された人々の姿の中で、リオノーラ・ハロウズの清らかで毅然とした生き様が哀しく胸を打ちます。

「リオノーラ、幸せにおなり・・・・」の言葉が、これを語った人物像とともに強く印象に残りました。

確かにリオノーラは両親の分まで幸せになったに違いない。そんな感想を持ちました。

ゴダードのミステリィ、特に初期の作品の情景は本当に詩情に溢れていますねぇ。