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レイ・ブラッドベリ「火星年代記」の感想です。

レイ・ブラッドベリ「火星年代記」☆☆

火星年代記

地球から火星に到着した人類と火星の原住民とのコンタクトから火星人の滅亡、そして怒涛のごとく始まる人類の火星植民の歴史と不思議な物語を、独特の叙情性で描いた古典的な名作オムニバスSFです。

最初に読んだのは管理人が中学生の時、始まりの物語が最もSFらしさを感じますが、あまり面白さを感じずに、全体的にイマイチ好みじゃないという印象を受けました。

全体的なトーンが幻想的ではあるけど、娯楽作品というよりも文芸作といった風で、もっとシンプルな冒険物語を期待していた当時の管理人には残念でした。

ただ、日本の文学界の作家でこの作品のような味わいの作品を書くことが出来る作家はいないだろうなぁと思いましたね。

火星年代記となっていますが、別段舞台が火星である必然性はないし、現在の常識では火星はこの小説の舞台になれるような星ではありませんが、しかし幻想的な火星の丘や海や運河や町などの描写が、どこかリアリティを感じさせてくれますし、それらは火星でなくてはならないような気がします。。

ブラッドベリは一般的なSF的な小道具を使うのが上手いとは思わないけど、なぜかロケットだけは使い方が上手いんですよね。しかもロケットが科学の粋を結集した輝かしいモノというよりも、どこか感傷的で子供の頃に遊んだおもちゃ箱の中身のような郷愁を誘うモノとして描いた感じがすごく良いし、彼の生き生きとした調子の整った文章にとても似合います。

中学生で読んだときにはイマイチだと思った作品ですが、その後歳を重ねて何度か読み返してみると、叙情的でノスタルジックな独特の雰囲気が素晴らしくて、やはりSF好きは一度は読んでおくべき名作だと改めて思いました。