レイ・ブラッドベリ「十月はたそがれの国」☆☆☆

十月はたそがれの国

管理人がSF小説を読み始めて間もない中学生の頃、シンプルなエンターティメントが多かった翻訳SFの中で、レイ・ブラッドベリの小説は何か独特な感じで、どこか文学の香りがしたように記憶しています。

ブラッドベリ作品は当時はSF小説のカテゴリーに入っていましたけど、SFというよりはファンタジィかホラーに近い感じで、あの頃はそういう作品も含めてSFと呼んでいましたね。

この作品はSFの抒情詩人と呼ばれたブラッドベリの処女短編集「闇のカーニバル」に、5編の新作を加えた全19篇からなる短編集で、恐怖小説の味わいがある作品が多かったです。


「こびと」は歪んだ鏡に映る大きくなった自分の姿を見るのが好きな見世物小屋の矮躯の男の物語。ホラーではないけど人間の嫌な部分が出て皮肉な侘しさを感じます。

「つぎの番」はミイラを見た妻が地下の埋葬室に恐怖を感じるようになった夫婦の話。

「マチスのポーカー・チップの目」はアンリー・マチスがポーカー・チップの上に美しい目を書いたというモチーフの話だけど正直良くわからなかった。

「骨」は原因不明ながら骨が痛んで仕方がない男性を描いたホラー。

「壜」はアルコール漬けの奇妙なものが入った壜を手にした男の物語。昔TVで放映していたヒチコック劇場でこんな物語を観たような記憶が・・・。

「みずうみ」は子どもの頃にみずうみで遊んだ思い出が語られる、少し耽美的なイメージの幻想的な作品。

「使者」は病気で寝たきりになっている少年と犬の話。しかしやっぱりテーマは死。

「熱気のうちで」は気の荒い女の後をつける二人の老人が見たものは・・・という話です。

「小さな殺人者」は難産で生まれた赤ん坊に怯える母親の物語で、初めて読んだ時にはとても印象深かった話です。「ローズマリーの赤ちゃん」のキャッチコピー「妊婦は読まないでください」を思い出します。

「群衆」は事故や災害の度に集まるやじ馬の物語ですが、この作品も結構印象的です。

「びっくり箱」は古い田舎家に住む母親と少年の話で、抽象的で分かりづらい感じがします。

「大鎌」は貧しい一家が道に迷って辿り着いた農家で出会う不思議を描いた作品。今思えばトワイライトゾーンで描かれるような雰囲気がある物語で、この作品も印象に残りました。

「アンクル・エナー」は翼を持つ男とその家族の物語で、この短編集の作品の中では唯一明るい雰囲気を感じさせます。

「風」は風に怯えている男と、彼と電話で会話する友人の話で、「群衆」と同じような主題のホラーになっています。

「二階の下宿人」は祖父母と暮らす11歳の少年が、おじいさんの家の2階にやって来た下宿人の正体に気がつく話で、ホラーだけど結末がカラリとしていて良いですね。

「ある老母の話」は死ぬことを拒絶している老女と死神の話。

「下水道」は部屋で下水道について語り合う姉妹の姿を描いた作品で、この作品もテーマは死だと思います。

「集会」は魔性の一族が集う万聖節の夜の集会に出席したいと願う病弱な少年の話。こういう雰囲気こそがブラッドベリの世界という気がします。萩尾望都とかが好きそう。

「ダッドリー・ストーンのふしぎな死」は死んだ作家が友人との過去を物語る作品・・・だと思います。この作品も少し分かりづらかった。

基本はホラーですが、範囲が広い短編集で、最初に読んだ時の管理人のお気に入りは「小さな殺人者」「群衆」「大鎌」「風」「集会」でしたね。


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