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パトリシア・A・マキリップ「茨文字の魔法」の感想です。

パトリシア・A・マキリップ「茨文字の魔法」☆☆☆

茨文字の魔法

壮大な物語をとてもコンパクトに、しかもきめ細かく情感豊かにまとめて描かれた、マキリップらしいファンタジィです。


レイン十二邦の王宮地下にある王立図書館では世界中から書物を集め、また学者や遠方の地から送られてくる古の書物の解読をしていた。

孤児で新米書記のネペンテスは、魔術学校「空の学院」から送られてきた茨のような文字で書かれた書物の解読にとりかかるが、そこに書かれていたのは、3千年前に世界を征服した皇帝アクシスと彼に仕えた最強の魔術師ケインの物語だった。

伝説ではケインは男だと思われていたが、この書物ではアクシスの従姉妹だったケインが、アクシスを愛するが故に影の存在となってアクシスの世界征服に力を貸す様子が描かれていた。

ネペンテスは魔法の力を持つ古の書物に魅せられていくが、ネペンテスと親しくなった「空の学院」の生徒ボーンはそんな彼女を気遣う。

そうした中、レイン十二邦は王の突然死と、14歳で王位を継いだ若いテッサラ女王に従おうとしない勢力の出現で政治的に大きな混乱に陥る。


3千年前の征服王と魔術師の物語と、現在のレインの状況と、ネペンテスとボーンの物語が巧みに交差して、壮大な物語を生み出していきます。

こういう物語をこういう風に語れるのはマキリップならではで、とても印象的で素敵なファンタジィです。