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桂望実「週末は家族」の感想です。

桂望実「週末は家族」☆☆

週末は家族

他人に対して恋愛感情を抱けない無性愛者の瑞穂は、学生の頃からの腐れ縁で小劇団主宰者の大輔と結婚している。

大輔は女好きだけど、それ以上にシェイクスピアが大好きという少年のような性格の男性。

瑞穂と大輔には性的な関係はなく、形式は夫婦だけど実際には友人のような関係が続いていた。

大輔が主宰する劇団は小さいとは言っても、運営するのにはお金がかかる。その費用を何とか工面しようとして、大輔は特殊な人材派遣業を始めた。

それは依頼者の親族を装ったりする特殊な事業で、そういう仕事には小さな子供がいたほうが良いと考えた大輔は、児童養護施設を訪れて演技力のある少女ひなたの週末里親になることを決めるのだが・・・。


面白い視点で描かれたヒューマン・ストーリーです。

演技の天才少女だけど大人を信じていないひなたと、気弱な無性愛者で物事を考えすぎてしまう心根の優しい女性・瑞穂と、芝居バカで子供のようだけど人間の本質的な部分を見抜く力がある大輔の3人が、心を通わせていく姿が淡々と描かれています。

子供のいない優しい夫婦が養護施設で暮らす子供を引き取って家族になっていくというようなストレートな物語ではなく、家族のあり方や人の生き方を少し別の角度から見たような作品で良かったです。