桂望実「我慢ならない女」☆☆☆
まだ10代、作家志望の若い女性・明子は、自分が書いた作品を読んで貰おうと、久しく会うことのなかった叔母ひろ江の元に向かった。
電車が通ると揺れるオンボロアパートで一人暮らしをする売れない小説家の叔母は、こんなつまらないモノを読ませてと10年ぶりに会った明子をこき下ろし取り付く島もない。
もともとひろ江は変わり者で愛想がなかった。
でも明子は幼い頃からそんなひろ江の事が大好きで、ひろ江が語るお話が大好きで、面倒がるひろ江の後を追い回していたという。
ひろ江の冷酷な言い方に傷つき創作意欲をそがれながらも、明子はひろ江の家に出入りするようになり、編集者に対して容赦無い言動をするひろ江のマネージャーのような立場になっていく。
この作品、すごく良かったですね。
小説を書くことは業だと言って、ストイックなまでに執筆に集中し、他人の気持ちを顧みないひろ江。
自分を曲げず、編集者との対立を恐れず、我が道を行くひろ江の殆ど唯一の理解者であり信奉者である明子。
この二人の関係が絶妙という気がします。
言葉や行動に現れていないお互いの気持が、巧みに描かれています。
明子から見れば自分の書く作品に絶対の自信を持っているように見えるひろ江が、実は心のうちでは不安がいっぱいで、ひろ江は口には決して出しませんが、明子の支えを本当に感謝しています。
物語の始めではタイトル通りの嫌な女のように思えたひろ江の印象が、読み進むうちに変わっていくに連れて、作品の印象も重たく暗い雰囲気から、どことなく明るさを増していくように思いました。
その手の物語ではないのに、おしまいの方ではチョット感動してウルっと来てしまいした。
こういう作品が管理人は本当に好きです。